Timelord Presents ピーター・バラカン “A Taste of Music”

A Taste of Music

A Taste of Music vol.05

ピーター・バラカン “A Taste of Music”



“いい音楽とは?”、“いいライヴとは?” A Taste of Musicは、音楽の伝道師ピーター・バラカンさんが素敵なオーディオ空間を訪ねながら、自ら選りすぐった音楽の魅力をライヴやレコードの聴きどころとともにお届けするWebマガジンです。

Introduction

◎Featured Artists
南紀勝浦に埋もれていた異色のギタリスト……濱口祐自
素朴な楽しさを感じさせたアクースティックなYMO……細野晴臣×坂本龍一

◎Recommended Albums
久保田麻琴のリマスターで甦った自主制作盤……濱口祐自『竹林パワーの夢』
音楽の遺産を後世に伝えようとする試み?……細野晴臣『Heavenly Music』

◎Coming Soon
奥深いキューバ音楽の魅力に触れる絶好の機会……ROBERTO FONSECA

構成◎山本 昇

Introduction

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2014年1月10日、東京・丸の内コットンクラブのステージに立ったVOLCÁNの面々。左から、ゴンサロ・ルバルカバ、ホセ・アルマンド・ゴラ、オラシオ“エル・ネグロ”エルナンデス、ジョヴァンニ・イダルゴ。撮影:米田泰久 写真提供:COTTON CLUB

 2014年最初のA Taste of Musicは、ここ六本木にあるタイムロードのショールーム「遊」に戻ってきました。そして、今回は初の試みで、抽選で選ばれた読者の方たち数名が遊びに来てくれています。今年も楽しい音楽をどんどん紹介していきますので、よろしくお願いします。
 さて、前回のA Taste of Music Vol.04では、お勧めのライヴを紹介するComing Soonのコーナーで、ゴンサロ・ルバルカバ率いる新グループVOLCÁNを取り上げました。まずはそのステージを観た印象からお話ししましょう。
 ライヴの醍醐味と言えば目で観る楽しさがありますが、その意味では打楽器の二人−−オラシオ“エル・ネグロ”エルナンデス(ドラムズ)とジョヴァンニ・イダルゴ(コンガ)−−にはとてもワクワクさせられるものがありました。めちゃくちゃ難しいことをやっているはずなのに、「こんなの朝飯前ね」みたいな感じで、終始ニコニコしながら楽しそうにやっている(笑)。これにゴンサロとホセ・アルマンド・ゴラ(ベイス)も加わって4人がリズムを通じて会話しているようです。観ているほうは、そんな刺激的な演奏に度肝を抜かれながらも、やっぱり楽しくなってくるというとてもいい音楽体験をすることができました。ライヴを見逃した方は、ぜひCDを聴いてみてください。

Featured Artists

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「Makoto Kubota presents 熊野 meets 秩父 feat. Yuji Hamaguchi special guest Shin Sasakubo」に出演した濱口祐自。2014年1月8日、サラヴァ東京にて。

 A Taste of Musicではこれまで、洋楽アーティストだけを紹介してきましたが、別にそうと決めていたわけではありません。今回ご紹介するのは、濱口祐自という日本人です。つい最近まで、和歌山県は那智勝浦の漁村に埋もれていたギタリストで、僕は彼の演奏を1月8日に渋谷のライヴハウス“サラヴァ東京”で観ました。なんとなく異国情緒の漂う日本人離れした雰囲気ですが、とてもナチュラルな楽しい人です。
 まだそれほど曲数を持っているわけではないようですが、ボトルネックを使ったブルージィなもの、ラグタイムやスウィング感のあるジャズっぽい曲など、いろんなタイプの曲を演奏します。ライ・クーダーが好きなのだそうで、実際に、彼が有名にしたバハマのギタリスト、ジョーゼフ・スペンスの「Great Dream From Heaven」も弾いていました。かと思えばエリック・サティの「グノシエンヌ」をやったりと、ずいぶん幅広い音楽を聴いている人です。そして、どれもが独特のゆったりとしたサウンドになっています。
 そんな彼はギターのチューニングにすごくこだわっているそうです。きっと耳がいいんでしょうね。ただ、ほとんど曲ごとにチューニングを変えたり直したりするんだけど、その間はずっとしゃべりっぱなし(笑)。おそらくライヴの半分くらいはMCだったんじゃないかな。

 実は彼のことを、「こんな面白い人がいるよ」と教えてくれたのが久保田麻琴です。麻琴さんとはもう30年以上前、僕がYMOの事務所で仕事をしていた頃からの付き合いで、初めて会ったのは彼がサンディー&サンセッツとして活動していたときでした。彼のことは夕焼け楽団の頃から知っていて、「いい音楽をやっているな」という印象を持っていました。たまに会っては音楽の話をしてきましたが、とても波長の合う人です。彼が世界のあっちこっちを旅しながら紹介する音楽はどれも面白いんですよ。とても鋭い嗅覚を持っている人なんでしょうね。その麻琴さんが「すごいギタリストを見つけた」と、送ってくれた音楽ファイルを2曲ばかり聴いてみたら、やっぱりいい。それでライヴはどんなものかなと観てみたら、これがまたとっても良かった。音そのものだけじゃなく、その人の演奏が作り出す空気も感じられるというか……。人間だれしも、その人の心の在りようが音に出るものだと思うけど、和歌山の最南端の辺鄙なところで生まれ育った濱口祐自という人のピュアな部分がよく聴き取れたと思います。

 ライヴのお話をもう一つ。昨年末、細野晴臣さんができたばかりのEXシアター六本木で行った2デイズ・ライヴを両日とも観てきましたが、初日(12月21日)の公演は「細野晴臣×坂本龍一」という、ちょっと珍しい名義のコンサートでした。主にアクースティック・ギターの細野さん、アクースティック・ピアノの教授(坂本龍一)が、一緒にやったり、ソロになったりして、それにボサノヴァ・ギターの第一人者として知られる伊藤ゴロー、このところ細野さんとよくセッションしている青葉市子、さらに小山田圭吾、ユザーンといったゲスト・ミュージシャンが加わりました。
 互いにソロ・アルバムで取り上げている曲やYMOの楽曲も演奏されましたが、テクノではなく、アクースティック楽器向けにまるっきり違う編曲が施されているので、「あれ? この曲は何だっけ」と一瞬考えるけど、メロディを聴いて「あっ、そうか」って感じで。最後のほうでは高橋幸宏も登場。最初はその大人しい感じの演奏に、うまくのれない様子だった観客も、一気に電気が走ったようでした。全体的には素朴な感じのする、ちょっと不思議なライヴでしたが、楽しかったですね。

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2013年12月21日、EXシアター六本木で行われた珍しいデュオ名義「細野晴臣×坂本龍一」のライヴ。撮影:高木将也

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